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農水省も、農林水産物を直接売り込むミッションを組織して、海外各地でこれまでよりもはるかに強力な、現地メディアが大々的に取り上げるくらいの宣伝活動を展開するというアイディアはどうだろうか。
輸出に興味のある国内の関係者が数多く同行し、商談を成立する足がかりにする。
さらに、相手国で人気のある日本のタレントやスポーツ選手、アニメキャラクターなどを宣伝に使えば、コストはかさむかもしれないが、宣伝活動の費用対効果は間違いなく向上するだろう。
少し古い話を紹介して、本章の締めくくりとしたい。
いまから20年以上も前の1985年6月、経団連(当時)の農政問題懇談会が食料安全保障について行った提言がある。
この提言の内容は、現在も十分生きているものであり、筆者が述べてきた主張ともかなり重なっている。
いまも生きている1985年の提言。
そんな古い話に、いま聞いても意義があるということは、この間に日本の農政が根本的に変わることができなかったという、非常に残念な事実も意味している。
提言のポイントは、自給率向上の名のもとに国内農業を保護してその競争力を低下させることに警鐘を鳴らし、農業そのものの生産性を高めるべきだとしている点にある。
この提言について報じた当時の新聞記事(N経済新聞98年6月27日)の一部を引用してみたい。
なお、文中にある「自給力」とは、生産性の高い農業を構築することなどを意味しており、「自給率」と対置される考え方である。
「提言ではわが国より穀物自給率の低いオランダが農産物の輸出国になっていることや、平時にも非常時と同様の自給率の達成を求める考え方に疑問をはさみ「自給率」よりは、もっと根本的な問題である「自給力」の向上に目を向けるべきだと強調している。
これは自給率の向上を目標に据えると、農産物の自由化を阻止する考え方につながり、肝心の農業の生産性を高めることがおろそかになることを懸念したものだ。
また食料安保論では平時と非常時が同一に議論されているとして、平時の対策として(1)借地の増大などによる営農規模の拡大(2)バイオテクノロジー(生命工学)など研究開発の推進(3)多国間二国間の穀物協定の締結などを挙げる一方、非常時の対策ではコメ、小麦など主要農作物の備蓄の強化を提言している」緩和への熱が冷め「規制依存」に逆戻りする日本。
このままでは国ごと沈んでしまうのか。
日本とフランス、プールの違いの意味。
日本経済が抱える大問題とされる「規制」について考える前に、まず身近な話題を一つ。
あるフランス人ジャーナリストが観察した、日本とフランスのプールの違いの話である。
興味深い観察なので、彼の書いたコラムからそのまま引用してみよう。
筆者は健康維持とストレス発散のため、数日に一度は泳ぐようにしている。
「フランスのプール」のほとんどは、「速く」「ゆっくり」「長く」といった習熟度別のレーンなどなく、飛び込みもポール遊びも自由。
スイミングキャップを被らなくて0Kのところもある。
縦横斜め、好き放題に泳ぐ人々の間を縫ってうまく泳ぐにはコツが必要だ」「日本のプールは、とにかくやたらと細かい決まりが多い。
キャップの着用に始まって、泳ぐ方向、子どもと水遊びしてよいエリア、1時間ごとの休憩…」「完全管理の日本と完全自由なフランスのプール。
組織に身を委ねる日本人と自己責任で行動するフランス人にも似る。
どちらかが絶対に良いとは言い切れない」(以上、A新聞2008年8月8日夕刊「エチエンヌのクールジャパン」プール」)の広いプールで泳ぐことが多いのだが、確かに、自由な方向に泳いだり遊んだりできるフリーエリアと、決められた方向に泳ぐスイミングコースとが、コースロープで区切られている。
そして、スイミングコースで、決められているのとは逆方向に泳いで監視員に注意されるのは、たいてい外国人である。
アナウンスも掲示も日本語しかないので、外国人を責めるのは酷だという意見があるかもしれないが、泳ぎ出す前にちょっと周囲を見れば、こちらに向かって数人泳いでくるのは見えるはずだ。
それでもぶつかるように泳いでいく感性は、日本人にはちょっと理解し難い面があるようにも思う。
先のコラムによると、フランス人のロジックは「自己責任」このプールの事例を経済の世界に当てはめると、日本流の安全管理方式は、規制でがんじがらめになった少し前の日本経済ということになるだろう。
問題が発生しないよう、監視員がしっかり見てくれているので、事故(経済で言えば企業の倒産)が起こりにくい。
その代わり、ちょっとコースロープにつかまったり、水中でふざけたりするだけで、警告の笛が「ピピッ」と鳴って注意されるなど、自由が利かず息苦しい面がある。
これを経済の世界に重ねると、当局の一挙手一投足がまず気になって、経済の活力が盛り上がってこないという状況になる。
不要な規制がたくさん残っている日本で経済政策を議論すると、どこかで必ず「規制緩和」という言葉が登場する。
これに対し、フランス流の完全自由方式のプールは、各経済主体の自己責任に任せるのを基本とする、規制緩和が十分に進んだ経済ということになる。
泳ぐコースも方向も決まっていないし、監視の目も行き届かないので、衝突事故(企業の倒産)が断続的に起きることは避けられない。
その一方で、ポールで遊んだり、好きな方向から飛び込んだりと、個性を生かしたさまざまな水との戯れ方が楽しめるので、ストレス解消度はかなり高くなるだろう。
「ピピッ」が聞こえず、休憩時間や注意事項のアナウンスなどもないので、プールはいたって静か。
精神衛生上もよい。
さて、日本のプールのような管理方式と、フランスのプールのような完全自由方式では、どちらが好ましいだろうか。
プールとしてはどっちもどっちだが、経済のありようとしては、「自由を尊重する方式のほうが、経済の活性化を促すという点で望ましい」というのが、筆者を含むエコノミストの多数意見だろう。
なお、念のため付言しておくと、実際には、フランスという国はプールの事例と異なり、経済に対する国の介入が伝統的に強いことで知られている。
睦日本経済が、規制に依存している部分をいまなお多く抱えていることの裏返しだ。
筆者の見るところ、日本人の行動パターンとしてよくあるのが、「ルールと組織さえ作れば一丁上がり」である。
新たに経済や社会の問題が浮上した場合も、会社で何らかの不祥事が発生した場合も、ルールと組織を作ることに重点が置かれてしまい、実際にルールや組織がワークしているかどうかの検証(いわゆるフォローアップ)は、二の次になりやすい。
しかし、不要になったルール(規制)や組織がそのまま残されている場合は、経済の活力を維持するという観点から、それらを早急に廃止すべきだ。
本来は、サンセット方式(一定期間が過ぎたら自動的に廃止する仕組み)のように、毎年あるいは数年に一度、「棚卸し」を行い、規則・規制や組織が必要な度合いを根本から点検する作業が求められ会議の類も同様の問題がある。
日本の会社や官公庁では、会議の数が多く、しかも時間が長いことが少なくない。
組織の中で偉くなると、会議のハシゴで自分の席が温まる時間がなくなる、ということさえ起こり得る。
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